シモンは、ディノ・ガヴィーナとマリア・シモンチーニによって、建築やモダンアートで影響力のあるデザイナーたちと共に、偉大なるイタリアンデザインの伝統を更に進化させるべく1968年に設立されました。シモンコレクションの持つ文化的素養や製造ノウハウにより、シモンは次第にデザインを愛する者たちにとって時代の最先端を担う定番のコンテンポラリーコレクションとなっていきました。家具のデザインが、文化的側面を促進する手段になったと言えます。シモンから誕生した作品は、品質、完成度、調和、詩情、皮肉の要素を特徴とし、デザインと製造技術の最高水準を示しています。そしてこの伝統は、カッシーナというもう一つの歴史的会社によって引き継がれました。
カッシーナがシモンをポートフォリオに加えたことは、イタリアンデザインの歴史に貢献してきた二つの重要なブランドが一つになったことを意味します。カッシーナは、1927年の創業当時から創意工夫、素材、クラフツマンシップを追求してきました。一方シモンは、1968年に設立され、合理主義の限界を極めることを目的とし、Ultrarazionaleコレクションで偉大な伝統的価値とのつながりを取り戻し、Ultramobileコレクションで芸術と工業生産の融合を成し遂げました。
DINO GAVINA / MARCEL BREUER / MARIA SIMONCINI 1963
GIO PONTI / MARCEL BREUER / DINO GAVINA
二つのブランドの創設者は、ディノ・ガヴィーナとチェーザレ・カッシーナです。親交を深めた1950~1960年代、二人はイタリアンファニチャーの急速な世界的発展に大きく貢献しました。彼らは独創的な方向性を目指すデザインの将来について長く議論を戦わせ、ガヴィーナは家具全般を、カッシーナはソファと椅子を引き受けるということで合意しました。また、その時代には足りなかったインテリアの範囲を広げて新たな室内環境を提供するため、1962年FLOSというコンテンポラリーな照明の会社を設立。二人の素晴らしい実業家は、1960年代のイタリアンファニチャーの世界的ブームの中で消費と文化の新たな関係を築くことに尽力していました。
1962年、ガヴィーナは1920年代のマルセル・ブロイヤーデザインの家具をライセンス生産しはじめ、これが世界初の再編集アーカイブモデルとなりました。しかし、ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンが1929年にデザインした家具に関しては、その当時非常に高度な技術を要すると考えられたため生産はしませんでした。それゆえにル・コルビュジエらのデザインは、1964年、デザインの可能性を理解しその技術をもって世界的成功に導くであろうと考えられたカッシーナの手に委ねられました。
CESARE CASSINA / MARCEL BREUEUR 1964
CESARE CASSINA / GIO PONTI 1970
ガヴィーナこそが「デザインを再編集する」というコンセプトや、デザイン文化と家具の関係がいかに重要であるかを初めて指し示し、カッシーナが後に1970年代よりフィリッポ・アリソン教授と共同開発する、偉大な建築家たちのイ・マエストリコレクションの土台を築いたのです。
DINO GAVINA / MAN RAY / JULIETTE BROWNER 1969
MAN RAY / MARCEL DUCHAMP / DINO GAVINA 1966

- Dino Gavina 1922-2007
- イタリア、ボローニャ生まれ。
1940年代、舞台セットの仕事でキャリアをスタートし、1960年Gavina SpAを設立。1962 年、N.Y.でマルセル・ブロイヤーに会い、彼の家具のリプロダクション権を得る。チェーザレ・カッシーナとともにFLOSを設立するなど、家具以外のインテリア設備の充実に尽力した。1968年、カルロ・スカルパやパートナーであるマリア・シモンチーニとともにSimon International を設立。合理主義の限界を打ち破ることを目的としたUltrarazionaleコレクション、家具にアートとしての機能をもたせたUltramobileコレクションなどにより、simonをデザイン界のリーディングカンパニーに押し上げた。ディノ・ガヴィーナこそが、今日「イタリアンスタイル」として知られるものの原点を生み出してきたのだ。マン・レイなど数多くの芸術家と交流をもち、デザイン、アート、我々の生活を豊かにするたくさんの詩的なものたちへの無限のエネルギーと情熱で、イタリアのみならず世界的にもデザイン界に大きな影響を及ぼした。