今回よりスタートする不定期連載「WELCOME HOME Interview」では、さまざまな業界で活躍する著名人のワークスペースや自宅の空間などをご紹介していきます。第一回目は、新進気鋭のジャパニーズブランドとして国内をはじめ、世界中で注目を集める〈ザ・リラクス〉のデザイナー倉橋直実さんのオフィス兼ショールームを訪問。スタンダードなものへの追求から生まれた、素材へのこだわり。そのアートピースのようなウエアをいっそう引き立てるインテリアへのこだわりとは?そこにはファッションデザインの哲学同様、無駄を削ぎ落としミニマムを極めたソリッドな空間が広がっていました。
ル・コルビュジエの家具と共鳴する服作り
NAOMI KURAHASHI(THE RERACS Designer) 場所:オフィス兼プレスルーム
ディレクターである倉橋直行さんと2010年にブランドを設立して6年。お二人にとって転機とも言える新たなショールーム作りに向けて、ある家具の購入を決意。それが、近代建築の巨匠ル・コルビュジエが手掛けたファニチャーです。「ル・コルビュジエとの出会いはちょうど2000年頃。1990年代から、とにかく二人で夢中で追いかけたアントワープ系デザイナーに憧れ、ベルギーを旅していたときのことです。典型的な古き良きヨーロッパ建築と近代建築が混在する街を散策中に、ふらりとアントワープ市庁舎に立ち寄ったんです。そこの1階で見かけたのがル・コルビュジエのLC1でした。有名なホルスタイン柄の椅子が何脚も置いてあり、それを見た瞬間衝撃を受けたんです。空間ともマッチしてか何脚置かれていてもまったく邪魔にならない、その美しいデザインに思わず見とれてしまったんですよね。そこから私たちが手掛ける洋服もこの椅子のような存在になりたい。と、いつしかル・コルビュジエがデザインする家具を意識した服作りを目指すようになったんです」
今やデザインの根底ともなった家具をショールームに入れることで服作りや環境にも変化があったそう。「このLC6のダイニングテーブルは、通常のものより少し低い印象です。ここのショールームの天井高は、約3.3m。このテーブルの高さは、まったく圧迫感を与えない絶妙な高さなんです。そして十数脚オーダーさせて頂いたLC1のチェアは、一脚ではもちろんのこと、何十脚置いても変わらぬ美しさをキープする稀有な存在です。ともにモダンに成りすぎず、嫌味にもならないデザイン性がとても気に入っています。〈ザ・リラクス〉は、ベーシックでモノトーンの服が多いのですが、このLC1に座ってバイヤーさんたちに見て頂く。やや低めに設定されたこの椅子の高さに合わせて、洋服の配置にもこだわっています。ちょうど目線より少し高く壁一面にズラリと並べる事で、モノトーンの洋服と真っ白な空間とのコントラスを楽しめる仕掛けにしています。家具を変えてから私たちのコレクションも強いものに変わったと思います。このインテリアに負けないもの、この家具を引き立てるモノ造りを、と考えたからでしょうか。私たちにとってル・コルビュジエの家具は、トップ・オブ・トップなんです。これからもル・コルビュジエと向き合いながら、どうしたらこの家具たちがもっと映えるのかを一緒に考えていこうと思っています」。

倉橋直実さんのインテリアを構築する4つの要素







- BASES(木の根)から始まり、TRUNK(幹)、BRUNCH(枝)、LEEF(葉)、FLOWER(花)と木が生まれてから花が咲いてまた芽がでるというようなイメージで、2.5年で一周するシーズンごとに巡回していくコレクションを発表。モノトーンを基調としたベーシックなデザインの中に、秀でたマテリアルが際立つこだわりのファブリックに注目が集まるブランド。

- 倉橋 直実 NAOMI KURAHASHI
- 1981年、静岡県生まれ。大学卒業後、セレクトショップに勤務。在籍中にパターンメイキングとテキスタイルを学び、2010年3月により、ディレクター倉橋直行とともに自身がデザインするブランド「THE RERACS」をスタート。
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